WFDBからTDE理事長にインタビュー

WFDB(世界ダイヤモンド取引所連盟)からTDE(東京ダイヤモンドエクスチェンジ)理事長 岩崎に対して、日本のダイヤモンド業界の近況について、インタビューがありました。

和訳は以下の通りです。

WFDB:TDEおよび所属企業における職務は何でしょうか?

TDE(一般社団法人 東京ダイヤモンドエクスチェンジ)の理事長として責任を担っています。東京ダイヤモンドエクスチェンジはWFDBの一員としてダイヤモンド取引の透明性や消費者信頼の維持など、ダイヤモンド業界における重要な役割を果たしています。また岩電産業株式会社の代表取締役会長として、企業の経営全般に関する責任を担っています。岩電産業株式会社はダイヤモンドの輸入と卸売を行う企業で、職務としては会社のビジョンや戦略の策定、経営方針の決定、組織の監督などを含みます。

WFDB:ダイヤモンド業界におけるこれまでの歩みを教えてください。

30歳の時に全く違う業界からダイヤモンド業界に飛び込みました。ロサンゼルスのGIAでダイヤモンドのグレーディングなど基礎知識を学び、その後ダイヤモンドの調達、販売など、ダイヤモンド取引のさまざまな側面で貴重な経験を積みました。この経験により、業界とそのダイナミクスについて包括的な理解を深めることができました。 経験が増えるにつれ、公正かつ透明なダイヤモンド取引を促進し、業界の関係者間での信頼と自信を醸成するプラットフォームの必要性を認識し、推進する事が自らの志向だと気づきました。このビジョンを実現するために、東京ダイヤモンドエクスチェンジに積極的に関わるようになりました。東京ダイヤモンドエクスチェンジは、グローバルなダイヤモンド市場において重要な 役割を果たす組織だと考えたからです。 さらに、東京ダイヤモンドエクスチェンジへの関与と並行して、優れたダイヤモンド素材の輸入•販売に特化した岩電産業株式会社をリードする機会も得ました。この二つの役割を兼ね備えることで、ダイヤモンド業界の知識とビジネスの洞察力を活かし、岩電産業の成長と成功を牽引しています。これからも、私の経験と業界知識、リーダーシップのスキルを活かし、東京ダイヤモンドエクスチェンジをさらに発展させ、ダイヤモンド業界全体の持続的な進歩に貢献することに全力を注いでいきたいと思っています。

WFDB:日本のダイヤモンドおよびダイヤモンドジュエリー業界の現状はどうなっているのでしょうか?

2022年の国内ジュエリー小売市場規模は、前年比106.3%の1兆227億円となり、2008年以来14 年ぶりに1兆円規模へと回復しています。リーマンショック以降、ジュエリー業界は長い低迷期が続きましたが、訪日外国人客需要の盛り上がりや株価の上昇、景気回復感が高まりを見せる中で、ジュエリー市場も次第に回復していると見ています。2020年 からのコロナ禍により一時的な減少はあったものの、富裕層は株高や不動産高による恩恵もあったことからそれほどの悪影響を受けず、行動制限等による自粛疲れに伴い消費行動は活発化していると見ています。こうした富裕層の消費行動は宝飾品市場をコロナ禍前の水準をも上回るほどに 押し上げる結果となりました。商業施設への人出も戻り、宝飾卸売業や小売店主催の催事販売会が予定通り行われたことも市場拡大に貢献しています。 2023年は、新型コロナウイルス感染症が日本の感染症法上の5類感染症に位置付けられることもあり、心理的な解放感からくる消費行動が期待され、またインバウンド需要の復活も想定されること等から、引き続き堅調に推移すると見ています。こうしたことから、2023年の国内(ジュエリー)小売市場規模は1兆423億円(速報値)を予測しています。

WFDB:ダイヤモンドやジュエリーのオンライン購入の人気はどのくらいですか?

日本のジュエリー市場は2007年を境に縮小を続け、2020年にはコロナ禍で更に落ちこみましたが、 翌年にはその反動で増加に転じ2022年度は1兆円を超えました。増加の要因としてイーコマースも挙げられます。大手ジュエリー小売業者がECにフォーカスして取り組みを開始したと思われます。企業の収支報告によると、ECチャネルは前年比10%以上の収益増となり、先行きの明るさを表しています。日本のジュエリー業界は、店頭での対面販売を得意としている業界です。そのためジュエリーECでは、対面販売での顧客体験をオンラインでどこまで再現できるか、という点が極めて重要な課題だと思っています。

ダイヤモンドはブライダルジュエリーとして人気がありますか?

日本では昔から婚約指輪として選ぶ宝石では、財産としての価値が高く、輝きと硬度のある宝石がふさわしいとされています。その代表的な宝石がダイヤモンドで、次にルビー、サファイアが挙げられます。近年まで婚約といえばダイヤモンド指輪でしたが、最近では婚約指輪を贈るのをやめて、新婚旅行や新居の家具などにその費用を当てる若者もいます。その時の経済状況が影響しているのかもしれませんが、嗜好が変化していることも否定できないと思っています。

日本で販売されているダイヤモンドはどこから輸入されていますか?

日本政府の貿易統計によれば、インドからの輸入が量、金額ともに圧倒的に多く、続いてベルギー、イスラエルが主要輸入国です。この状況は10年以上続いています。

現在の日本の経済状況はどうなっているでしょうか?2023 年後半以降ダイヤモンド産業にどのような影響が及ぶでしょうか?

日本経済は、経済活動の正常化を背景に内需を中心に緩やかに持ち直しています。2023年度以降、 内需主導で1%台の成長を維持するとみています。個人消費は、物価高による下押しはあるものの、賃 金上昇を追い風に回復が続くとみています。ダイヤモンド産業はコロナ禍に対する政府対応が一段下に位置付けられていますが、心理的な解放感からくる消費行動、Eコマースの発展が期待されますが、極端な円安は懸念材料です。

日本のダイヤモンド産業が直面している課題と好機は何ですか?

1)消費者の好みや需要が変化しているため、産業はこれに応じる必要があります。
2)ダイヤモンド流通の透明性が消費者の疑惑を招かないための施策が必要です。
3)国内で混在する2次流通する中古ダイヤモンドとの差別化が求められていると考えています。
4)合成ダイヤモンドの技術進歩により合成ダイヤモンドは価格下落傾向にあるため、天然ダイヤモンド価格への影響を防ぐ必要があります。
これらの課題を適切に把握し、対応することでダイヤモンド産業は持続的な成長と競争力の維持に向けて取り組むことが重要だと考えています。

以上となります。原文もぜひご参照ください。
TDE WEBマガジン編集部

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